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東京高等裁判所 昭和29年(ネ)2490号 判決

控訴人(原告) 浅野浅治郎

被控訴人(被告) 銚子市議会

主文

原判決を取消す。

本件を千葉地方裁判所え差戻す。

事実

控訴人は「原判決を取消す。被控訴人が昭和二十八年十月十四日なした控訴人を被控訴議会から除名する旨の議決を取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は「本件控訴を棄却する。」との判決を求めた。

当事者双方の陳述した主張の要旨と、提出した書証とこれに対する認否は、すべて原判決の記載と同一であるから、ここに引用する。

理由

原判決は、地方議会の議員の除名は国会議員の除名と同様に裁判所の裁判事項ではないと判示しているが、地方議会は国会と異り、国家機関である裁判所と併立する関係に立つものではなく、国家機関である裁判所は国家的一般法秩序の維持のために、地方議会のなした処分に対しては、原則として介入する権限を有するものと解するを相当とする(地方自治法第一二七条四項参照)。ことに、本件に於て取消を求めている処分の対象は議員の除名処分という、議員たる身分を失うかどうかという問題であるから、右除名処分の取消を求める訴は裁判所の裁判事項に属すると解するを相当とする(最高裁判所昭和二八年一月一六日決定、判例集七巻一二頁、昭和二七年一二月四日判決、昭和二八年一一月二〇日判決判例集七巻一二四六頁参照)。しかして、原裁判所は本訴が裁判事項ではないとしながら、訴を却下することなく、請求を棄却しているから、本案判決をしているかのようにみえる。しかしながら、原判決は、本訴請求の内容の当否についてはなんら判断しているわけではない。元来裁判事項に属するかどうかの問題は訴訟要件に属し、裁判事項に属しないと認めれば訴却下の判決をなすを相当とするが、仮りに原判決のように、請求棄却の判決をなしたとしても、本案についてなんらの審理判断をなしていない以上、民事訴訟法第三八八条を適用する関係では、訴却下の場合と、なんら異らない。

故に、本訴を裁判事項に属しないとした原判決は失当であるから、これを取消し、民事訴訟法第三八八条によつて本件を千葉地方裁判所え差戻し、主文のように判決する。

(裁判官 柳川昌勝 村松俊夫 中村匡三)

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